触れられなくても、君がいい。 ――青い二人の、遠距離ロマンス。

 最後まで上りきると、無事に古びた拝殿の前に着いた。

 二人で五円玉を投げ入れ、パンパンと二度鳴らした手のひらを合わせる。
 そして、静かに目を瞑った。

「…………」
「…………」

 暗闇の中で耳を澄ますと、風に揺れる葉たちの奥から、波音が薄っすらと聞こえてきた。


「――ねえ。夏帆ちゃんって、航のこと狙ってるの?」


 三十秒が経たないうちに、唐突な問いが投げられた。

「……えっ?」

 驚いて目を開ける。
 隣の葉月ちゃんはもう目を瞑っておらず、こちらをじっと見ていた。

「ね……狙ってるって?」

 動揺のあまり、そのまま聞き返す。

「男として好き? ってこと。私、こういう勘は鋭いんだよねえ」

 言葉に詰まった。

 もちろんまだ大好きだけれど――ここですんなりと認められるはずがない。
 彼女がどんな意図で探りを入れてきているのかも、わからない。

「なーんだ、違うんだ」

 私が頭の中でぐるぐると答えを探している間に、勝手に『ノー』と結論づけられてしまったようだった。

「よかった。私、航のこと大好きだし」

「……え?」


「ファーストキスの相手も……お互いなんだよっ」


 風が、止んだ。
 ざわめいていた木々の音が、嘘のように消え失せる。
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