触れられなくても、君がいい。 ――青い二人の、遠距離ロマンス。
「早く戻ろっ。怖い」
立ち尽くす私に、彼女は軽く言い放った。
そして踵を返すと、一人で足早に石段を降りていく。
頭の中が真っ白になったまま、その背中を追いかけた。
半分くらいまで降りたとき。
すぐ脇の茂みが――ガサガサッと大きく揺れた。
「……っ、キャーッ!!」
「……あ、ネコ」
鼓膜が破れそうなほどの悲鳴を上げ、私に思い切りしがみついた彼女の声と。
葉の隙間からひょっこりと顔を覗かせた三毛猫に気づき、無機質に呟いた私の声が、見事に重なった。
「どうしたどうした!?」
階段の下から、みんなが慌てたようにうかがってくる。
さっきの言葉で感情が麻痺したままの私は、半泣きで腰を抜かす葉月ちゃんを支え、なんとか下まで降りていったのだった。