触れられなくても、君がいい。 ――青い二人の、遠距離ロマンス。
「あ、来た来た」
少しして、悠也くんが道の向こうを顎でしゃくった。
焦ったように、息を切らして走ってきた航が私たちに追いつく。
悠也くんは、「じゃあなー!」とペダルを踏み込み、あっという間に自転車で走り去っていった。
航と二人きりになる。
けれど、彼の目を見ることができなかった。
航は「放ったらかしにしてごめん」とか「やっぱり、無理に誘わない方がよかったよな」とか、慎重なトーンで気遣ってくる。
私は、長女として培ってきた、作り笑いのための筋肉を動かした。
「大丈夫。楽しかったよ」
行きとはまったく違う、鉛のように沈んだ気持ち。
夕暮れを迎えようとする海の横を、航とは一定の距離を保ったまま帰っていった。