触れられなくても、君がいい。 ――青い二人の、遠距離ロマンス。
 ◇

 夕食の時間になると、海遊びの疲れで昼寝をしていた湊人が、すっかり体力を回復させたようで元気に跳ね回っていた。

「はやくバーベキュー、いこっ!」

 私の誕生日ということもあり、今回はいつもの懐石料理ではなく海の幸のバーベキューを選択したらしい。
 開始時間にはまだ少し早かったけれど、待ちきれない湊人に急かされる形で、みんなで部屋を後にした。

 場所はいつもの食事会場ではなく、最上階にある見晴らしの良いテラスだ。
 近づくにつれて、もう炭を起こしているのか、潮風に乗って海鮮の香ばしい匂いがふわりと漂ってきた。
 それにつられた凪沙も、「いいにおいするーっ」と駆け出す。


 テラスに足を踏み入れた瞬間、思わず感嘆の声が漏れた。

「わあ……」

 ちょうど夕日が水平線に沈もうとする時間帯だった。
 目の前には、美しい橙色に染まる空と、光を反射するビーチが一面に広がっている。

 シックな色合いのパラソルの下に並べられたコンロ。
 その近くには、宿のご主人である航のお父さん――そして、航の姿があった。

 彼は半袖シャツの袖をさらに捲り上げてトングを持ち、手際よく準備を進めている。

 テラスに設置された業務用の大きな扇風機から送られてくる風が、日焼けで火照った肌に心地よかった。

 ふと、航と視線がぶつかる。
 昼間、嫌な態度をとってしまったのにもかかわらず、彼は少しだけ口元を緩めてくれた。
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