触れられなくても、君がいい。 ――青い二人の、遠距離ロマンス。
 ◇

 黙ったまま、大きな背中についていく。

 街灯の少ない海沿いの道路に出る。
 ふと、頭上の空に驚いた。

「……っ! なんで、こんなによく見えるの?」

 テラスから見上げたときも十分に綺麗だったけれど、その倍くらいの星たちが、こぼれ落ちそうなほど瞬いていた。
 同じ空のはずなのに。

「明るい場所だと目が眩んで見えづらくて、暗い場所だとよく見える」

 月明かりを頼りに、ビーチに沿って伸びる暗い道を進んでいく。

「…………」
「…………」

 自分から誘ってきたのに、航は何も喋らない。
 沈黙に耐えきれず、背中へ声をかけた。

「買い出しって……スーパーとか?」

「そう」

「どこにあるの?」

「歩いて二十分くらい」

「えっ、結構遠いんだね」

 航は前を向いたまま、「田舎だもん」と小さく笑った。

 優しい波音だけが、二人の間に規則的に響く。
 時折、静かな黒い海を眺めながら、歩いた。
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