触れられなくても、君がいい。 ――青い二人の、遠距離ロマンス。

「あいつ……そんなことまで言ったのかよ」

 そして、はあっと溜息を吐いた。

「……保育園のとき、頬っぺたにされただけだし。そんなの、おままごとみたいなもんじゃん」

 思ったよりも昔のことで安堵しそうになるものの、ぐちゃぐちゃになった感情は、すでに収拾がつかなくなっていた。

「……知らないっ。私には、そんな経験ないし」

 たまらなくなり、ベンチから立ち上がった。
 彼に背を向け、地面を乱暴に踏み鳴らすように歩き出す。

「おい、一人で行くなって。暗くて危ない」

「ついてくるなら、数メートル空けてよ!?」

 ビーチを後にしながら、乱暴な声を投げた。

 航はそんな私を追いかけながら、ぼそっと呟く。


「なんか、夏帆……子どもみたい」


「……え!?」

 眉をひそめながら、勢いよく振り返る。

「もっと、落ち着いた子かと思ってた」

 そう言った航は、なぜか楽しげな表情をみせていた。

 けれど――ぐさりと急所を突き刺された私は、溢れ出す感情のまま叫ぶ。


「……べつに、航にどう思われたって関係ないし! こんな私でもいいって言ってくれる人、見つけるから!」


 夜のアスファルトに溶けていく自分の声が、たまらなく虚しい。
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