触れられなくても、君がいい。 ――青い二人の、遠距離ロマンス。
夏以来、航はこれまでの文通に加え、月に二回ほど電話をくれるようになっている。
まだスマートフォンを持っていない彼は、夏に肝試しをしたあの神社へ続く道にある、古い電話ボックスからかけてきてくれているらしい。
「誕生日、何するの?」
『宿泊が一件入ってるから、その手伝い』
「えっ。いつも通り」
『男なんて、そんなもんだよ』
航はまた、ふっと笑った。
スピーカーを通したその声は、対面で話すときよりもハスキーで。
耳元で囁かれているような錯覚に陥り、どうしようもなくドキドキしてしまう。
他愛のない会話を交わし、五分ほどで電話を切った。
通話終了の画面になっても、最後の『またね』の余韻が、やけに甘く残っている。
椅子に座ったまま顔を覆い、机の下で両足をバタつかせた。
もちろん、航からの『好き』も、ほしい。
友達が言うような不安も、ある。
それでも、今は。
彼の特別な日に、冷たい海風が吹く冬の電話ボックスから、わざわざ連絡してくれたという事実だけで。
私は、懲りもせず舞い上がってしまうのだった。