触れられなくても、君がいい。 ――青い二人の、遠距離ロマンス。
 ◇

 そのまま、冬が過ぎ――。
 薄紅色の蕾が膨らみ始める季節を迎えた。


「委員長」

 よく晴れた、肌寒い春先の週末。
 模試会場の門をくぐり抜けたところで、背後から声をかけられた。

 振り返ると、同じ塾に通う小宮山がいた。

「あ、お疲れ」

 私が一つ上のクラスに上がり、彼と同じ授業を受けるようになってからというもの、こうして言葉を交わす機会が増えた。

「志望校、もう絞った?」

 隣に並びながら、尋ねられる。

「うん。〇〇高校」

「うわ、同じだ」

「なに、『うわ』って」

 眉をひそめてみせるものの、彼は余裕の表情だ。

「判定は?」

「……C」

「俺、B」

「…………」

 恨めしげな視線を送ると、「まあ、部活引退した後に本気出せばいけるんじゃない」と意地悪く笑い飛ばされた。


 ふと、冷たいながらもほんのりと春の匂いを含んだ風を浴びる。
 去年の四月、この小宮山から唐突に『俺と付き合えば?』などと言われたことが蘇った。

 その後も、特に気まずくなることもなく会話できている。
 やはりあれは、ただのからかいだったのだろう。

 ちなみに、あの直後に付き合い始めた塾の子とは、あっという間に別れたらしい。
< 93 / 242 >

この作品をシェア

pagetop