恋を知らないきみへ
時計をチラッと見る。

このあと十時から展示場に行くから来場者へ声をかけて、帰社したらアンバサダーを引き受けてくださっているインフルエンサーの家庭に電話をかけてみてもいいかもしれない。

そんなことを考えているうちに、社内チャットが次々に飛んできた。


【送信者 マーケ 木ノ下】
の文字に胸がざわつく。

なんとなく深呼吸を挟んでから、メッセージをクリックした。

【お疲れ様です。
アンケート案を作成しました。
添付をご確認ください。
必要であれば質問項目の追加も可能です。】


添付ファイルには、回答フォームまであった。

・家を買う理由
・重視するもの
・予算
・共働きか
・子どもの予定
・SNS利用状況
・休日の過ごし方


……え。月曜の朝なのに、もうここまで作ったの?
あまりにも無駄がなくて、それがなおさら彼らしい。

いや、でも。
彼の作ったこれには、決定的に足りないものがある。

家を建てる側・家を買う側の、“気持ち”だ。


素早くメッセージを打ち込む。

【お疲れ様です。
確認致しました。

営業側としては、お客様の気持ちに寄り添いたいので本日の展示場で直接お話を伺ってきます。
そちらをのちほど共有させて下さい。】


すぐに返信が来る。

【気持ちって必要?】


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