恋を知らないきみへ
「……なんなの、ほんとに」

思わず口に出していた。
そして気づけば、電話を手に取っていた。指が勝手に、内線番号を押している。

心を落ち着かせている時間もないまま、数コールで電話が繋がった。


『……マーケティング部、木ノ下です』

「営業の小関です」

『……なに』

低いテンションが、更に低くなるかのような返し。

どうしてこんな人がいたことに、今まで気がつかなかったんだろう。
名乗っただけで「なに」って初めて言われた。


「あのさ、アンケートの件」

『あー……、気持ちがどうとか、そういうのね』

「お客様がどう思ったかも大事だと思うの」

『データで十分でしょ』

……どうして決めつけるの。

「数字だけじゃ見えないものもあるよ?家を買うのは人なんだから」


私が言い切ったところで、ふっと電話口から笑う気配がした。
それはまるで、小馬鹿にするような。ため息をつくような。

『個人の意見なんてたいてい偏るよ。たった数組の気持ちだけ聞いてどうするの?』

「……だから、まだあと二週間あるでしょ?コツコツ集めるから、お客様に聞いて回る!」

『……好きにすれば。俺には分かんない』

「どうして木ノ下くんはそういう言い方を……」


言い返そうとした時、思いっきり『ガチャッ』と音がした。

その後に続く無機質なツーツーという音だけが耳に残る。


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