恋を知らないきみへ
定時を一時間ほど過ぎた頃、私は廊下の奥にある自販機の前にいた。
その自販機をどつくみたいに、カフェオレのボタンを押す。
ガコン、と音がして下から冷たい缶のカフェオレが落ちてきて、それを取り出した。
自販機前に設置されている長椅子に座った私は、買ったばかりのカフェオレを開けもせずに下を向いて深いため息をついてぼんやりしていた。
……私、だいぶ木ノ下くんにイライラしちゃってる。
任された新ブランド立ち上げの最初の一歩に過ぎない、このちょっとしたやり取りだけでかなり疲れてる。
これから先、二人で作り上げたものを部長たちに持っていくとして、修正作業や取りまとめもやらなきゃいけない。
たぶん、今は二人だけど少しずつ規模も大きくなっていって、そして完全なプロジェクトになるまでもっと時間がかかる。
───この先も、ずっと彼と関わらなきゃいけないの?
「……無理」
ぽつり、と小さくつぶやいたら、場違いな明るい声がした。
「ほーのか!」
名前を呼ばれて我に返る。
反射的に顔を上げると、そこには何も知らない桃果が駆け寄ってくるところだった。
「どうしたのー?お疲れじゃん。暑さにやられてるのー?」
桃果のいつものテンションに引っ張り上げられるように、私も気持ちを持ち直してカフェオレのプルタブを開けた。
「暑さよりもなによりも、……木ノ下くんにやられてる」
「……木ノ下?……えっ?マーケの?」
「うん」
彼女にとっては予想外の人物だったらしい。
そういえば、と桃果は私の隣に腰かけて軽く笑っていた。
「なんか言ってたねー。なんだっけ、ブランド立ち上げで関わってるんだっけ?」
「……そう。でも私、すっごく嫌われてる。だからやりづらい」
「は?ほのかが?なんで?」
「知らないよ!入社してからしゃべったこともなかったのに!」
その自販機をどつくみたいに、カフェオレのボタンを押す。
ガコン、と音がして下から冷たい缶のカフェオレが落ちてきて、それを取り出した。
自販機前に設置されている長椅子に座った私は、買ったばかりのカフェオレを開けもせずに下を向いて深いため息をついてぼんやりしていた。
……私、だいぶ木ノ下くんにイライラしちゃってる。
任された新ブランド立ち上げの最初の一歩に過ぎない、このちょっとしたやり取りだけでかなり疲れてる。
これから先、二人で作り上げたものを部長たちに持っていくとして、修正作業や取りまとめもやらなきゃいけない。
たぶん、今は二人だけど少しずつ規模も大きくなっていって、そして完全なプロジェクトになるまでもっと時間がかかる。
───この先も、ずっと彼と関わらなきゃいけないの?
「……無理」
ぽつり、と小さくつぶやいたら、場違いな明るい声がした。
「ほーのか!」
名前を呼ばれて我に返る。
反射的に顔を上げると、そこには何も知らない桃果が駆け寄ってくるところだった。
「どうしたのー?お疲れじゃん。暑さにやられてるのー?」
桃果のいつものテンションに引っ張り上げられるように、私も気持ちを持ち直してカフェオレのプルタブを開けた。
「暑さよりもなによりも、……木ノ下くんにやられてる」
「……木ノ下?……えっ?マーケの?」
「うん」
彼女にとっては予想外の人物だったらしい。
そういえば、と桃果は私の隣に腰かけて軽く笑っていた。
「なんか言ってたねー。なんだっけ、ブランド立ち上げで関わってるんだっけ?」
「……そう。でも私、すっごく嫌われてる。だからやりづらい」
「は?ほのかが?なんで?」
「知らないよ!入社してからしゃべったこともなかったのに!」