恋を知らないきみへ
盛大なため息をついて、カフェオレを喉に流し込む。

冷たくて甘くて美味しい。
でも、イライラはそう簡単には消えてくれなかった。


「……私、気づいてないだけで無意識に木ノ下くんになにかしたのかな」

「そんなわけないっしょ」

励ますみたいに、桃果がポンと私の肩を叩いてくれる。

両手で缶をぎゅっと握って、怒りとも悔しさともとれない感情を投げた。

「全部つっかかってくるんだもん。お客様の意見も、データに変換しようとしてくるし。数字しか見てないんだよ」

「あー、マーケだもんね。そういうの嫌だよねー。木ノ下って見た目神経質そうだし、マーケの典型タイプなんじゃない?」

「違う。あれはもう、私のことが嫌いすぎて認めたくないんだと思う」


仕事は仕事と割り切ってやればいいだけなのかもしれないけれど、気持ちを切り替えるほど大人にもなれなくて。
またため息が漏れてしまった。


桃果は私の隣で背中を撫でていたものの、途中でぴたりと手を止めて首をかしげた。

「……珍しいね、ほのかがこんなに落ち込むのも」

「落ち込んでるっていうよりも、むかついてる」

「あはは、じゃあなおさら珍しいじゃん。ほのかの口から愚痴なんて聞いたことなかったなーって」

“珍しい”なんて言われると思っていなかった。


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