恋を知らないきみへ
【“友達を呼べる家”は、来客対応可能なリビング空間へのニーズと捉えていいと思います】

【“子どもがのびのび暮らせる家”は、音や広さへの不満の裏返しですよね】

【個別の言い回しより、共通項の抽出を優先した方がよさそうです】


───そういうことじゃないんだけど。

そうじゃないから、私はわざわざお客様の言葉をそのまま残してるんだけど。


顔を見ないで済む社内チャットは便利だけど、彼の文面が気に入らない。

チャットの画面を見るたびに何度も“そうじゃない”と思ったけれど、文字だけで言い返しても埒が明かない気がして、結局いつもぐっと飲み込んでいた。


そして今日。
前回のバトルから一週間。

午後四時。
営業部から数フロア上がった先にある、小会議室スペース。

パーテーションで簡単に区切られただけの簡易的な打ち合わせ場所に着くと、すでに木ノ下くんは席に座っていた。

いつも通りの無愛想な顔でノートパソコンを開き、画面に視線を落としている。

私が来たことにも気づいているはずなのに、顔すら上げない。


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