恋を知らないきみへ
「でも、結局は同じじゃない?子どもが成長して、今の家じゃ手狭とか不便とか不満が出てきたってことでしょ」

「違うってば」

「どこが?」

「だから、そうやって一個にまとめないでって言ってるの」

自分でも、少し語気が強くなってきているのが分かった。

でもたぶん、木ノ下くんにはそれすら届いていない。


「“子どもが成長したから”っていうのと、“毎日下の階に気を遣って静かにしなさいって言うのがしんどい”っていうのは、全然違うよ」

「でも、結果的に求めてるのは同じ住環境なんじゃないの」

「木ノ下くんさぁ……」

あまりにも会話が噛み合わなくて、私は片手で額を押さえた。

小会議室スペースの隣では、別の部署の人たちが静かに打ち合わせをしている。

だから、ここで大きな声を出すわけにはいかない。
でも、たぶん今の私は、かなり顔に出ている。


「……言いたいことがあるなら言えば?」

と木ノ下くんも、私を煽るように睨んでくる。
ここで好戦的になるの、やめてほしい。

「ほんとに、数字とか分類とか好きだよね」

「仕事だからね」

「そういうことじゃなくて」


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