恋を知らないきみへ
「じゃあ、“家族が増えても生活が回る家にしたい”っていうのが、かなり大きかったんですね」

「そうですね」

由佳さんはうなずいて、広いリビングをぐるりと見回した。

「娘が大きくなったから家を、というより、もう一人子どもが増えた時にちゃんと暮らせる家にしたい、っていう感じでした」


その言葉を、私は心の中でそっと反芻した。

“家族が増えても生活が回る家”。

数字や条件だけでは出てこない、でもたしかにその家族の核にある言葉だと思った。


「じゃあ実際に住み始めてみて、よかったなって感じることはどんなことですか?」

そう尋ねると、今度は悠真さんと由佳さんが顔を見合わせる。

「住み始めた頃は、じつは正直“ちょっと余裕ができたな”くらいだったんですよね」

と、由佳さん。

「紬もまだ保育園だったので、今みたいに持ち物が多いわけでもなかったですし」

「でも、紬が小学校に入ってから変わったよね」

悠真さんがそう言うと、由佳さんも「そう!」とより大きくうなずいた。

「娘が小学生になったら、“この家でよかったな”とか“家を建ててよかったな”って思うことがすごく増えました」

私は思わず身を乗り出す。

「例えばどんなところでですか?」

「まず、娘のものを置く場所がちゃんとあることですね。ランドセルとか、学校から持って帰ってくるプリントとか、宿題をする場所とか」

由佳さんの視線が、すぐにダイニング横のスタディスペースに向いた。


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