恋を知らないきみへ
「前は、家の中がずっと“なにかの”途中みたいだったんですよね」
ぽつりとそう言ったのは悠真さんだった。
「食卓の横に保育園バッグが置いてあったり、僕の仕事の資料が積んであったり、娘のおもちゃが転がってたり。どこにいても“いま生活の途中です”みたいな感じで」
その表現があまりにも分かりやすくて、私はついつい笑ってしまった。
「生活の途中……、たしかに」
「今は娘のもの、夫婦のもの、仕事のもの、ってそれぞれ置き場ができたので、家に帰ってきた時にちょっと落ち着けるようになった気がします」
「家の中に切り替えができた感じですね」
「それです!」
私が言うと、悠真さんは嬉しそうに微笑んだ。
その横で、今まで黙っていた木ノ下くんがパソコンに何かを打ち込みながらふと顔を上げた。
「……それって、住む前には想像してなかった満足ですか?」
思いのほか自然な問いかけに、私は一瞬だけ木ノ下くんを見る。
彼は私を見ることなく、高瀬さんご夫婦の方へ視線を向けていた。
「想像してたものと、実際に住んでみてよかったと思う部分にズレはありましたか?」
その問いかけに、由佳さんが「ありますね」とすぐに答える。
「建てる前はもっと、“二人目が生まれても大丈夫な広さ”とか、“収納が足りるか”みたいなことばっかり考えてたんです。でも、実際に住んでみて大きかったのは、娘の生活が整ったことかもしれないです」
「生活が整った?」
木ノ下くんが繰り返すように聞き返した。
「はい。朝の支度とか、学校から帰ってきてからの流れとか。前より“次に何をするか”が分かりやすくなったというか」
「紬も、自分の机があるのが嬉しいみたいで」
悠真さんがそう言うと、ちょうどそのタイミングで本人が元気よく割り込んできた。
「そう!紬の机、かわいいんだよ!」
ぽつりとそう言ったのは悠真さんだった。
「食卓の横に保育園バッグが置いてあったり、僕の仕事の資料が積んであったり、娘のおもちゃが転がってたり。どこにいても“いま生活の途中です”みたいな感じで」
その表現があまりにも分かりやすくて、私はついつい笑ってしまった。
「生活の途中……、たしかに」
「今は娘のもの、夫婦のもの、仕事のもの、ってそれぞれ置き場ができたので、家に帰ってきた時にちょっと落ち着けるようになった気がします」
「家の中に切り替えができた感じですね」
「それです!」
私が言うと、悠真さんは嬉しそうに微笑んだ。
その横で、今まで黙っていた木ノ下くんがパソコンに何かを打ち込みながらふと顔を上げた。
「……それって、住む前には想像してなかった満足ですか?」
思いのほか自然な問いかけに、私は一瞬だけ木ノ下くんを見る。
彼は私を見ることなく、高瀬さんご夫婦の方へ視線を向けていた。
「想像してたものと、実際に住んでみてよかったと思う部分にズレはありましたか?」
その問いかけに、由佳さんが「ありますね」とすぐに答える。
「建てる前はもっと、“二人目が生まれても大丈夫な広さ”とか、“収納が足りるか”みたいなことばっかり考えてたんです。でも、実際に住んでみて大きかったのは、娘の生活が整ったことかもしれないです」
「生活が整った?」
木ノ下くんが繰り返すように聞き返した。
「はい。朝の支度とか、学校から帰ってきてからの流れとか。前より“次に何をするか”が分かりやすくなったというか」
「紬も、自分の机があるのが嬉しいみたいで」
悠真さんがそう言うと、ちょうどそのタイミングで本人が元気よく割り込んできた。
「そう!紬の机、かわいいんだよ!」