恋を知らないきみへ
棚の横に置かれた小さな机の上には、音読カードと連絡帳、色鉛筆のケースが並んでいる。

壁には紬ちゃんが描いたらしい家族の絵が何枚か貼られていた。

「これ、紬の机なんだー!」

「かわいい〜。ちゃんと整頓されてるね」

「今日はね、帰ってきてからここで宿題したの」

「えらい!」

私がそう言うと、紬ちゃんは得意げに胸を張った。

それから、机の上にあったスケッチブックを取り出して、今度は木ノ下くんの前に突き出す。

「たすくくん、見て、これ」

「……なに?」

「紬のおうちなの」


開かれたページには、クレヨンで描かれた家の絵があった。

四角い家の横に、大きめのお腹のママと、パパと、紬ちゃん。そして、丸で囲まれた小さな赤ちゃんらしきものも描かれている。

「これがママで、これがパパで、これが紬。で、これ赤ちゃん」

「……へえ」

木ノ下くんはなんとなく返事はしているものの、『上手だね』とか『すごいね』とか、気の利いた言葉は返せないようだ。


おもむろに、紬ちゃんがスケッチブックを指さす。

「あとこれ、ほのかちゃんもいるんだよ」

「───えっ、私!?」


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