恋を知らないきみへ
よく見ると、家の横に長い髪の女の子らしき絵がある。

にこにこ笑っていて、手にはなぜか花束みたいなものを持っていた。

「私まで描いてくれたんだね。お花持ってて素敵!ありがとう!」

「うん!だって、ほのかちゃんすっごくかわいいから!」

不意打ちで紬ちゃんにそう言われて、思わず言葉に詰まる。

「ちょ、ちょっと待って、急にどうしたの?」

「え?だってほんとだもん」


紬ちゃんはまっすぐ私を見上げたまま、さらにとんでもないことを言い出した。

「ねえ、ほのかちゃんっていつからかわいいの?一年生の時にはもうかわいかった?」

「……えっ!」

「紬もほのかちゃんみたいに綺麗なお姉さんになりたいの。なれるかな?」

「ええっ!?」

今度こそ変な声が出た。
顔が熱くなるのが自分でも分かる。

「いや、ちょっと紬ちゃん、そんなに褒めてくれるなんて……」


リビングの方から、由佳さんの楽しそうな笑い声が聞こえた。

「紬ね、ずーっと小関さんが大好きで。今日も本当に“まだかな?”とか“お話できるかな?”とか言ってたんです」

「う、嬉しいですけど…、こういうのは慣れてなくて…」

完全に動揺している私を見て、紬ちゃんはきょとんとしていた。

どうやら本気で思ったことをそのまま口にしただけらしい。そんな無垢な瞳がなおさら私をどこか気恥ずかしくさせる。


そして最悪なことに、紬ちゃんはそこで終わらなかった。

くるりと振り返って、今度は木ノ下くんを見上げる。

「ねえ、たすくくんもほのかちゃんはかわいいって思うでしょ?」


───ぴたりと空気が止まった。


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