恋を知らないきみへ
ほんの一瞬、返す言葉が見つからなかった。
褒められたわけではない。
たぶん、木ノ下くんにとってはただの役割分担だ。
それでも、その言葉だけは、不思議と嫌ではなかった。
「……分かった」
私はキーボードにそっと手を置く。
そして、由佳さんが笑いながら話してくれたことを思い出す。
完璧じゃなくてもいい。
ただ、前よりはちゃんと暮らせる気がする。
家を建てる理由は、立派な夢だけじゃない。
毎日の生活を少しだけ回しやすくしたいという、切実で、現実的で、でも確かに前向きな気持ちでもある。
その温度が伝わるように、言葉を選んだ。
木ノ下くんはなにも言わずに黙ってそれを見ていた。こういう時は余計な口出しをしてこない。
私が文字を打ち終えると、彼は少しだけ語尾を整える。それだけだった。
今度は勝手に消されない。
私も、直された箇所を戻さなかった。
資料へ向き直ってから、ふと隣の木ノ下くんへ視線を移した。
気づけば、最初は向かい合っていただけの私たちが同じ方向を向いている。
画面を見るため。ただ、それだけ。
それでも、さっきまでより少しだけ同じ資料を作っている気がした。
••┈┈┈┈••
褒められたわけではない。
たぶん、木ノ下くんにとってはただの役割分担だ。
それでも、その言葉だけは、不思議と嫌ではなかった。
「……分かった」
私はキーボードにそっと手を置く。
そして、由佳さんが笑いながら話してくれたことを思い出す。
完璧じゃなくてもいい。
ただ、前よりはちゃんと暮らせる気がする。
家を建てる理由は、立派な夢だけじゃない。
毎日の生活を少しだけ回しやすくしたいという、切実で、現実的で、でも確かに前向きな気持ちでもある。
その温度が伝わるように、言葉を選んだ。
木ノ下くんはなにも言わずに黙ってそれを見ていた。こういう時は余計な口出しをしてこない。
私が文字を打ち終えると、彼は少しだけ語尾を整える。それだけだった。
今度は勝手に消されない。
私も、直された箇所を戻さなかった。
資料へ向き直ってから、ふと隣の木ノ下くんへ視線を移した。
気づけば、最初は向かい合っていただけの私たちが同じ方向を向いている。
画面を見るため。ただ、それだけ。
それでも、さっきまでより少しだけ同じ資料を作っている気がした。
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