恋を知らないきみへ
そこで軽く「了解」とか言えていたなら、よかったのに。

私は今回のことで身に染みたことがある。
それは──自分の文章力のイマイチさ、だ。

営業として培ってきたコミュニケーション能力や、相手の話を引き出すことには、たぶん他の人よりも長けていると思う。

でも、いざそれを今回のように第三者に見てもらうとなった時に、うまく生かせない。


パスタをフォークに絡めながら、ちらりと木ノ下くんを見やる。
彼は私を不思議そうに眉を寄せて見ていた。

「……私さ、お客様の言葉の細かいニュアンスとか、表情とか。文章にするの苦手みたい。……というか、ちゃんと伝えられない。帰ってきてからマーケ部寄るから、直接木ノ下くんに報告しに行ってもいい?」

「そんなことないと思うけど。でも、まあ小関さんがそうしたいなら、別にいいよ」


午後のそれぞれの立ち回りを話したあと、私はさっきの会議室でのやり取りを思い出していた。

「部長の"どこで使う?"って質問、……あれ、私の中でめっちゃ刺さったんだよね」

「あー……」

思いのほか木ノ下くんはそこを否定しなかった。
むしろどちらかというと共感寄りの反応をしていた。

「マーケだと作ることを考えるけど、営業は届けることまで考えるからね」

「同じ資料なのに、見てる場所が違うんだね」

「だから俺たち組まされたんじゃない?」


なんでもないことのように言った木ノ下くんが、そのままご飯を口に運ぶ。
てっきり少食かと思っていたのに、ご飯はしっかり大盛りだった。妙にそこだけ年相応で、少しだけ安心する。


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