恋を知らないきみへ
若年層ファミリー向けの新ブランド。
作るものは同じでも、見るものはそれぞれ違っていて。でも最終的には繋がっていく。

どうして営業部の私と、マーケティング部の木ノ下くんが選ばれたのか。
違う観点から見て作り上げることで、これまでにない新しいものができあがる。

……やっぱり、これはちゃんと重い案件なんだと思い知らされた。


「……はぁ」

変なところでため息をついてしまって、手を止める。

案の定、木ノ下くんのめんどくさそうな、そして呆れたような視線。

「そんな分かりやすくため息つく?」

「あ、今のため息は、“私だけ余裕なくてかっこ悪いなあ”のため息」

「……は?なにそれ」


今日会議室で赤ペンで修正を入れまくった、昨日作った資料。
何枚もテーブルに並べているけれど、修正だらけで心が折れそうだった。

だけど、たぶんそれは私だけ。


「木ノ下くん、あんなに色々言われたのに全然落ち込んでないじゃん。“明日には再提出できる”って言ってたし」

私がそう言うと、木ノ下くんは「いや」と意外にも首を振った。

「落ち込んだよ」

「……ほんとに?」

つい疑惑の目を向けてしまう。


「でも俺は、分かんないまま終わる方が嫌だから。ちゃんとダメなところは言ってもらった方が嬉しい」

と、彼は私から視線を外してまたチキン南蛮を食べ始めてしまった。


……そういう考え方もあるんだな。
これまでの私にはなかったかもしれない。

私がぼんやりそんなことを考えていると、不意に木ノ下くんの視線が私の後ろへ向いた。

なんだろう?と思っているうちに、聞き覚えのある明るい声。


「小関さん、お疲れ!」

振り向くと、そこにいたのは営業部の男性の先輩だった。

「あ、お疲れ様です」

「今日の午後は?外出るの?」

「はい。展示場に行ってきます」

「外、死ぬほど暑いから。熱中症に気を付けてね」

「ありがとうございます!」

軽く会釈すると、先輩はランチのトレイを持って去っていく。


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