恋を知らないきみへ
「……展示場までは?車?」

木ノ下くんに尋ねられて、私はすぐさままた彼に向き直る。

「うん。車で四十分、いや五十分くらいかな」

「帰社予定は何時?」

「一応十七時だけど、間に合いそう?」

「うん、大丈夫。俺もそれまでにまとめておくから……」


彼が言いかけたところで、今度は他部署の後輩の女の子がこちらにやって来るのが見えた。

「小関さーん!」

思いっきり名前を呼びながら、笑顔で駆け寄ってくる。

「あ、琴美ちゃん」

と小さく手を振ると、彼女は嬉しそうに肩をすくめた。

「名前覚えててくれたんですか!嬉しいです!」

「広報部の子だよね。覚えてるよ」

「今度、使ってるコスメ教えてください!」

「コ、コスメ……?」

「約束ですよ!」


こちらは戸惑っているというのに、広報部の琴美ちゃんが私のトレイをまじまじと見つめる。

「あっ、小関さんはパスタなんですね!私もそれにしよーっと。お疲れ様です!」

慌ただしく挨拶して、ぱたぱたといなくなった。


「……知り合いと遭遇する確率、低いはずなんだけど」

ぼそり、と木ノ下くんがつぶやく。


まだ話し途中のテーブルに広げた資料と、食べかけのランチ。

たしかに、彼が言う通り端っこの席をあえて選んだはずなのに。どうしてなのだろう?

「なんでだろうね?」

疑問に思ったので、私も首をかしげる。


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