『胡蝶の夢』に囚われて ― 夢か現か幻か ―
26 ◇棘がとれる  

 私がいろいろと計画をあれこれ考えていたところ、再度続けての蓉子からのDMが届いた。

 深夜だった。

『フミさんからいただいたDMでむちゃくちゃ元気が出て、今日はずっといい気分だったの。
 でも、夜になると駄目ね。
 情けないけど……。

 ずっとね、私迷っていたのよ、彼のこと。
 実はフミさんに内緒にしていたことがあるの。

 もし本当のことを知られたら──
なんて思われるかと考えると、お話するのを躊躇ってしまって……わたし。

 そのせいで、本当に相談したかったこと、訊きたかったことが話せなかったの。 

 フミさんがそれとなく訊いてくれた時もわたし、わざとはぐらかしたりして。
 ごめんなさい。わたしの付き合っている人、奥さんと子供のいる人なの。

 結婚の話もね、あまり進んでいないっていうのは、それはそうなんだけど……。 

 実は去年一度"結婚しないなら、もうわたしたち別れたほうがいいと思う"っていう話を
したことがあって……。

 その時彼ね、絶対私とは別れたくないって言って──
『妻とは離婚して君と一緒になるつもりでいるからもう少し待ってほしい』って言ったの。
 ね、ほんとに彼は離婚して私と結婚するつもりがあると思う?』

 とうとう本音を綴ったDMが彼女から届いた。

『妻と離婚して君と緒になるつもりでいるからもう少し待ってほしい』

 何行にも書かれた文章の中のその一行が、私の胸深くに突き刺さる。

 私には未だ何も言ってきてはいないけれど、彼女の告白のお陰で夫の本心が
見えた。

 喉元に棘が刺さったかのように、夫の本心が宙ぶらりんになっていた中、ようやく
私の喉元から棘が取れた瞬間だった。

 そっか、そんなに私と別れたいんだ──あなた。

 あなた以上に素敵な男性を目の前にぶら下げられても、蓉子さんがあなたを
選んでくれたらいいわね、貴史さん。

 お手並み拝見といきましょうか。




< 26 / 46 >

この作品をシェア

pagetop