『胡蝶の夢』に囚われて ― 夢か現か幻か ―
27  ◇文世と蓉子の間でDMの遣り取り

『38才で結婚の話が進まないって聞いていたのでどうしてなんだろう? 
って不思議だったので、お相手が既婚者だと聞いて腑に落ちたわ。

 どうかな? 4年近くも待っているのにその彼はまだあなたと離婚してないのでしょ?
 ……っていうか、その彼ほんとに奥さんと離婚する気あるのかしら。
奥さんと離婚の話し合いしてるのかなぁ』 送信。



『子供のことがあるから……奥さんと子供がちゃんと暮らしていけるように
してやらないといけないからっていう理由でこれまで何度ももう少し待って……もう少しだけ
待ってって言われてもう4年も過ぎちゃって。もうわたし、待てない……』  返信届く。


『出会ったときあなた24才で、もう28才でしょ? 
 あっという間に30才になってしまうわよ。
 そんな待たせてばかりの男止めて他の男性(ひと)アタックしてみれば?
 先日話したように、婚活するしかないわね』 送信。


『彼ね、やさしくてスマートでカッコイイのよ。
 他の男性(ひと)見てもなかなかときめかなくて』返信届く。


 ややや、お惚気がはじまっちまったじゃないの。
 やーめーて。

『トキメキかぁ~、んとに悪い男だわっ』
 そっか、彼らは恋愛を楽しんでるんだ。
 なんか、悔しい~。

え~っと、もう少し彼女にいろいろ喋らせたいから、返信しなきゃだけど
何書こうか。う~ん……。

『その人、お金持ってるの?』 送信。


『いつもビシーっとしてる。時計や靴、傘や鞄にと、まぁ高級品ばかり身につけてるから、
アレかななんて……』返信届く。


『アレって?』送信。


『だって、社内の他の既婚者はもっと年齢が上でもなかなかあそこまで身に着けているものとか、
まぁそのデートの時なんかもね、むちゃくちゃお金持っていそうなの。
だから実家が相当裕福なのかな、なんて……』返信届く。


 しばらく、やりとり休止して私は独り言ちる。



『その裕福な実家は妻のほうでございますことよぉ~。

 あの人ん家(ち)は至って平凡なお家で父親は公務員、義母は専業主婦で
お金持ちからは程遠い家でございますわよ~。

 結婚しても今のリッチなデートのように贅沢はできなくてよ。
 こりゃあ、だいぶ夫は彼女にお金かけてると踏んだ。
わし(・・)は』

 私は怒ると自分のことをわし(・・)と表現する癖がある。
 昔読んだ漫画のせいかもしれない。

 いけないっ、気がつくと散々DMをチャットのように遣り取りしていたのに
いろいろ考えているうちに、反応返し忘れていたみたい。

 私は慌てて彼女に再度のDMを送った。


『高級感のある靴やスーツ、腕時計なんかを身につけた彼といるとドキドキさせてもらえるし、
高級店で贅沢な食事もさせてもらえる。

 そんなリッチな彼とあわよくば結婚できるかもしれないと思うと、とてもじゃないけど
なかなか彼との縁を切れないってわけね。

 しかも彼は既婚者特有の余裕があって、独身者よりも落ち着いていて大人に
感じるのでしょうね、蓉子さん。

 蓉子さんが詳しく話してくれたお陰で、彼の現在の状況もなんとなく掴めたし、
蓉子さんの気持ちもわかったわ。ひとまず、残り半年静観するとしましょう。
私のほうでも、良い方が見つかれば蓉子さんに声を掛けますね。

 また何か状況が動いた時に連絡くださいね。
 今日のところはこれで失礼します』送信



 まぁ、情報が取れるっていうご褒美はあったものの──
面白くもなんともないDMの遣り取りで、とても疲れた~。

 明日も休みなのが幸いする。
 まずは、学生時代からの友人である山倉美並と連絡を取らなくちゃね。
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