『胡蝶の夢』に囚われて ― 夢か現か幻か ―
28 ◇山倉美並
そう、忘れもしない大学の卒業式の日、当時美並には恋人がいた。
4回生で卒業時期、ステディな彼のいる女子が果たして大学内に
何人いただろう。
私の知りうる限り、繋がっていた同期の中では彼女だけだったと
記憶している。
彼氏ほしい年齢に突入していた周りの女子たちからは、羨望の的だったのではなかっただろうか。
彼女とはゼミで知り合っただけで、常時一緒につるんでいたわけでもなく、卒業後は疎遠だった。
そんな山倉美並との再会は、彼女がドン底にいた時のことだった。
◇ ◇ ◇ ◇
その日、前々から夫が休日に所用で出掛けると聞いていたため、前々から
覗いてみたかった神戸北野美術館へと私は足を向けた。
白っぽい外壁の美術館は可愛らしい雰囲気の建物だった。
展示されていた美術品を見終えたあと、そのまま帰ろうかとも思ったものの、書店にも
長い間ご無沙汰気味だったなぁと思い、三宮店のジュンク堂へと足を運んだ。
エスカレーターで文芸コーナーのある2階へと……。
書棚に近づくと、ちょうど私が手に取ってみたい本の前でぼーっと前方を見ているだけの
女性の姿が目に入った。
しばらく遠慮して待っていたのだが、一向にその女性は本を手に取るでなし
何かを探している様子でもなし、私の中で変な人認定したあと、意を決して
言葉を掛けた。
「すみません、ちょっとそこにある本を見てみたいのですが……」
彼女が私のほうへ視線を向けた時──
お互いに「「あっ!」」と声が出ていた。
なんと、大学の同級生、山倉美並だったのだ。
「お久しぶり~、ごめんね、何か探してた?」
私がそう訊くと──
彼女は被りを振った。
「私の方こそ、何もないのにぼうっと突っ立っててごめん。
どうぞ」
そう言うと、美並は場所を譲ってくれた。
私は、何故か元気のなさそうな彼女のことが気に掛かったのと、次またいつ会えるかも
わからない相手であること、ちょうど飲み物を口にしたかったこととかが、重なり、気が
付くと……。
私は手にした本を書棚に戻すと、美並をお茶に誘っていた。
そう、忘れもしない大学の卒業式の日、当時美並には恋人がいた。
4回生で卒業時期、ステディな彼のいる女子が果たして大学内に
何人いただろう。
私の知りうる限り、繋がっていた同期の中では彼女だけだったと
記憶している。
彼氏ほしい年齢に突入していた周りの女子たちからは、羨望の的だったのではなかっただろうか。
彼女とはゼミで知り合っただけで、常時一緒につるんでいたわけでもなく、卒業後は疎遠だった。
そんな山倉美並との再会は、彼女がドン底にいた時のことだった。
◇ ◇ ◇ ◇
その日、前々から夫が休日に所用で出掛けると聞いていたため、前々から
覗いてみたかった神戸北野美術館へと私は足を向けた。
白っぽい外壁の美術館は可愛らしい雰囲気の建物だった。
展示されていた美術品を見終えたあと、そのまま帰ろうかとも思ったものの、書店にも
長い間ご無沙汰気味だったなぁと思い、三宮店のジュンク堂へと足を運んだ。
エスカレーターで文芸コーナーのある2階へと……。
書棚に近づくと、ちょうど私が手に取ってみたい本の前でぼーっと前方を見ているだけの
女性の姿が目に入った。
しばらく遠慮して待っていたのだが、一向にその女性は本を手に取るでなし
何かを探している様子でもなし、私の中で変な人認定したあと、意を決して
言葉を掛けた。
「すみません、ちょっとそこにある本を見てみたいのですが……」
彼女が私のほうへ視線を向けた時──
お互いに「「あっ!」」と声が出ていた。
なんと、大学の同級生、山倉美並だったのだ。
「お久しぶり~、ごめんね、何か探してた?」
私がそう訊くと──
彼女は被りを振った。
「私の方こそ、何もないのにぼうっと突っ立っててごめん。
どうぞ」
そう言うと、美並は場所を譲ってくれた。
私は、何故か元気のなさそうな彼女のことが気に掛かったのと、次またいつ会えるかも
わからない相手であること、ちょうど飲み物を口にしたかったこととかが、重なり、気が
付くと……。
私は手にした本を書棚に戻すと、美並をお茶に誘っていた。