『胡蝶の夢』に囚われて ― 夢か現か幻か ―
39 ◇里穂のアパートでコトのあらましを聞く


 今か今かと自分のことを待っていたようで、すぐにドアが開く。

 泣きはらした👀目をした里穂の姿があった。

 いつものように3帖ほどのキッチンを通り抜け西側の壁を背面に設置されて
いるソファに腰掛ける。

 里穂は左にあるベッドに腰掛けている。

「どうしてそんなことに……?」

「実は、少し前に副業でTiktok始めてて、そこで知り合ったファンの人たちとオフ会したの」

「Tiktok? オフ会?」

 巷でオフ会という言葉を聞いたことはあるが、まさか自分の彼女がそういうものに参加していたなんて……。

「なんでまた?」
 こんな言葉しか俺の口からは出てこなかった。

 毎日、仕事に追われて忙しい自分のことを考えると、副業をするという発想はまったく無かった
ため、出た台詞だったかもしれない。

「私ね、結婚資金を少しでも貯めたくてTiktok始めたんだけど、思ってた以上に投げ銭してくれる
ファンが増えて──それでオフ会してほしいって言われて……」

「オフ会って単語は耳にしたことあるけどさ、ああいうのって普通日帰りなんじゃないの?
泊りでオフ会する必要あった?」

「うん、私もそこはすっごく迷ったんだけどね。
オフ会を要望した人たちが歌ったりするんだったら一泊にしたほうがゆっくりできるから
泊りにしてほしいって言われて……」

「何人くらいで行ったの?」

「え~とね、女性3人男性3人の6人」


 咄嗟に里穂は嘘をついた。


「そんなに大勢で行ったのに、どうしてそんなことになったんだ?  
男に襲われたって言ってたけど他の4人はその時いなかったのか? 
そのイベントっていうか、まぁ夜の飲み会みたいなのが始まった時は
6人だったんだろ?」

「あれから他の人と連絡とってないし──実のところわかんないの」

 里穂が泣き声で話す内容を聞きながら、胃が痛くなってくる。

 他に人間が4人もいて、その中には女性が2人もいたのに里穂だけが襲われる
シチュエーションになるものなのか?

 疑問しかないんだよなぁ~。

「達也、警察に付いてってほしいの」

「いいよ。だけど、俺にもちゃんと説明ができないのに行ってからちゃんと話できるんのか? 」

「説明できない部分は、逆に捜査してもらえばいろいろわかるんじゃないかって思うのよね」

「一緒に旅先に行った人間を招集してってこと?」

「うん」

「名前とか住所わかってるんだ?」

「わからないけど、電話番号のわかってる人がいるからその人たちだけでも
来てくれるように説得してもらおうかなと思って。

 私が話しても来てくれるかどうか分かんないけど、警察からの出頭命令だと来てくれると
思うんだ」


「なるほど……。じゃ、今から行きますか」

「うん、助かる。ありがと」


 こんな風なやり取りのあと、俺たちは最寄りの派出所へ向かった。

 そこで、彼女の口から『レイプ』という単語を聞くと、担当してくれた警察官から──

 自分から署に連絡をしておくので警察署へ行くようにと、促された。


 案内された警察署は最寄駅から遠く、不便なため、俺たちは一旦俺の家へ行き
そこから車で警察署へと向かった。





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