『胡蝶の夢』に囚われて ― 夢か現か幻か ―
40 ◇高遠里穂の副業[TikTok ティックトック]

 本田にも話した通り、里穂が副業としてTikTok を始めたのは紛れもなく本田との結婚資金
を集めるために──というのが大きな理由だった。

 そしてそれほど大きな野望を抱いていたわけではなかった。
 細々とでも、小銭が稼げれば──くらいの気持ちでいた。

 あまりに伸びない再生数に投げ銭。
 再生数がほとんど無いのだから投げ銭どころの話ではなく、そんな感じのお粗末な状況が
しばらく続いた。

 どうすれば再生回数を増やせるのだろう、考えるのはそんなことばかりになっていき──

 一芸と言えば歌うのは得意だがプロになれるほどではないのだから押して
知るべしで、再生回数を伸ばす起爆剤にはならなかった。

 そんな時、週末久しぶりに実家へ帰った折、何気に弟から聞いた話がヒントになる。

 ピアノを弾いているyoutuberの女性が、上半身露出度高めで引くようになると一気に
再生回数が爆上がりをし、登録者数が伸びたんだよと──そんな話を聞く。

 その時は、またまた~くらいの気持ちで聞いていたのだが……。

 再生回数とファンを増やせるのなら、やってみる価値はあるのかなと思い、
里穂は実行してみることにした。

 ものは試しと、胸元が大きく開き首周りはGold(金)で装飾されているホルターネック
の黒のピチピチのミニワンピースで登場してみた。

 すると、どうだろう。

 鳴かず飛ばずのTikTokにファンが押し寄せて来るようになったのである。

 コンサートなどのチケット席で例えるなら、満席御礼と言った具合である。
 投げ銭も一回2万円とか4万円とか──
千円単位の小額ではなく1か月も過ぎると軽く100万円は超えていた。

 歌を唄ったり恋バナをしたりと、歌とただの雑談程度だというのに、エロい服を着て
登場するだけで嘘のように大金が手に入るようになり──里穂は浮れた。

 と、その内──
毎日のように1万円分2万円分というようにギフトを贈ってくれる人たちから
オフ会を開いてほしいと懇願されるようになる。

 調子に乗っていたこと、美味しい支援者を失いたくないという損得勘定が働いたこと
などで、里穂は本田に相談することもなく、泊りがけのオフ会へ行ってしまった。

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