『胡蝶の夢』に囚われて ― 夢か現か幻か ―
44 ◇里穂の部屋で

 俺は、無駄に警察署内で待たなくてよくなり、内心ほっとした。
 自分の恋人が酷い目に遭ってしまったことは、まだどこか他人事だった。

 そして考えていたのは、このことが本当に不可抗力で起きたことなら自分は
彼女を責めるべきではないと──そんなことだった。

 そして逃げるかのように交際をやめるというのも、卑怯な気がした。

 渦中にいる今、結論を出すべきではないし、いつか自分たちがどのように流れていくかは、
時が解決してくれるだろう……そうも思った。

 里穂の部屋に戻りスマホを見て時間を潰していたが、時計を見ると15時30分近くになっていた。

そういえば、今日から大相撲の九州場所が始まってたなぁ~と、思い出しちょうど時間つぶしに
テレビを見ようと思い、俺はテレビのスイッチを入れた。

 電源が入ったらすぐにNHKにチャンネルを回そうと思い、リモコンに手をかけるも──
驚いたことにTikTokをやっている里穂の姿が現れた。

 見ると、パソコンとテレビの端子にケーブルが差し込まれていた。

 オフ会に行く前に見ていたのか?  帰宅後見ていたのか?

『なんだよ、これ』

 警察へ一緒に行く前に、今回のあらましは聞いていて、そもそもが彼女の始めたTikTokが
事件の発端だったことは理解している。

 だが、目の前の映像は、聞かされて抱いていたイメージからは大きく乖離していた。

 媒体などは見慣れているし、きっと里穂が写っていたとしても普通の格好で見たなら、
それほど衝撃は受けなかっただろうと思う。

 何が衝撃って──
今まで見たこともないセクシーなファッションで彼女が登場していたこと。

『こんなふうにTikTokをやっていたなんて聞いてない』



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