『胡蝶の夢』に囚われて ― 夢か現か幻か ―
5 ◇お嬢様を持つ父親の親心

 文世の父親は大層子煩悩で、愛娘(まなむすめ)が大学で悪い友人に誘われて良くない方向へ行くことを懸念し、石田雅人はじめ柳井純平、北野宏の3人に大学の学費免除を謳(うた)い、裏向きは文世のボディガードとして、そして表向きは娘の取り巻き&友人として常に文世を護衛するよう言い渡していた。

 そう、文世は富裕層の娘で正真正銘のお嬢様なのだった。

 このことは文世はじめ選抜された3人の男子学生しか、知らないことだった。

 文世と何の利害関係もなく相性が良くて親しくなった女友達は何も知らない。


 文世は、家が富裕層な割に周囲に溶け込んだ学生らしい装いで、化粧も
ファンデーションとパステルカラーの口紅を塗るだけですませていた。

 造形は元々整っている文世だったが、男たちが振り返るような派手なメイクや華やかな
装いは意図的に避け、他の学生たちの中にいて人目を引かぬよう、目立たないようにして
いた。


 誰の目にも──
永堀文世(ながぼりふみよ)や一緒に行動している花田小梅(はなだこうめ) や白石彩夢(しらいしあやめ)が、入学して間もない頃から男子学生3人と
親しくなれるようなタイプには映らなかった。

 それなのに、文世に女友達ができるといつの間にか3人の男子学生が加わる
ようになり……。

 花田と白石は、元々文世が石田と知り合いで、その流れで石田が友達を連れてきて6人グループに落ち着いたのだと推測していた。


 傍目から見るとこの男女混合のグループは、それぞれがカップルなのかなと思えば、そういうのでもなく──

だが何故かいつも6人で行動して、不思議な集団に見えていた。


 だが、そのことに関して『不思議だ』とか『おかしいよね~』などと、表立って露骨に言う者はいなかった。

 少し違和感はあるものの──
『まっ、そういうこともあるのかも』ぐらいに、周囲は受け取っていた。

 目立たぬようにしていた文世だったけれど、そういう意味ではかなり目立つ
存在として周囲からの興味を引いていた。

 男子3人は花田小梅と白石彩夢のことも文世と同様に親し気に接した。

 そのようなことがあり、比較的大人しめの花田も白石も自分たちは文世と
友達になれてラッキーだと思っていた。

 
 大学生ともなると、周囲の女子たちは車を持っている男子学生を恋人に
したくて日々奮闘していた。

 そんな中、文世たちは特定の誰かと付き合っているというわけではないけれど、毎日のように
男子3人とランチを共にし、お茶を飲み、帰りは途中まで電車も一緒だった。


 なので――――
周囲からはこの3人の娘たちに羨望の視線が飛び交っていた。

 花田と白石には、どうなって3人ものほどほどに洗練されている男子3人が、自分たちのグループに
いるのか推測はするものの、本当のところはよくわかっていなかった。


 文世と友達になったら、知らぬ間にもれなくついてきたという、なんとも有難い展開に
なっていたのだ。

 そして、そのような自分たちには過ぎたる環境下で、2人の女学生たちは
充実した日々を過ごした。
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