『胡蝶の夢』に囚われて ― 夢か現か幻か ―
6 ◇呼び出される(4話からの続き)

 文世は桜庭の待つ、ティールームへと向かう。

 それを側で見ていた石田がすぐに動いた。

 文世の後を追うようにして、席を離れた石田の行動を見ていた柳井と北野は、素早く視線を交わした。

 花田小梅と白石彩夢たちも文世のことを心配したものの、一緒に付いて行かないと決めると、
学食のエビフライカレーを食べるのに夢中で、男子2人が目配せしたことなど気付いてはいない。

 小梅も彩夢もやさしい性格なので、文世が席に戻った時に話を聞いてやり、何か
桜庭からのいやがらせがあったなら慰めてやらなければ、くらいのことは考えて
いたけれど……。

 それとともに、どうして石田が文世の後を付いて行ったのだろう? とも
考えたは考えたのだが、さっぱりわからずじまいに終わっていた。


          ◇ ◇ ◇ ◇


 文世が自分を待っていた桜庭の元へ行くと、彼女は友達1人と座って待っていた。

「桜庭さん、話って何かな?」

「石田くんと付き合ってんの?」

「付き合ってないけど……」

「じゃあ、どうしていつもいつもアンタたちと一緒なのよ」

『そりゃあ、私の父親から頼まれて私のボディガードしてるからよ、と言えれば良かったけど、
まぁ、この女に言う義理(筋合い)はないかっ』

「そりゃあ、友だちだから……。
 それに私は大抵石田くんともつるんでるけど、あとの4人とも仲良くしてるから……
石田くんとだけ付き合ってるわけじゃないわ」

「そっかぁ~、じゃあまだ2人ナイトがいるんだからいいよね~? 
 石田くんはさ、うちらのグループに貰うわ」

「御勝手に……どうぞ。
 だけど、たぶん石田くんは私たちのグループから抜けたりはしないと思うわよ」

「なにっ……言ってんの」
と言うや否や、桜庭が文世にコップの水を顔めがけてぶっかけた。

「きゃっ~、酷い」

 文世はいきなりの仕打ちに怒りながらも、とにかく濡れた頭と顔、それと洋服を
どうにかしなければと、そちらに注意を向けなければならず、文句を言う暇もなかった。

 するとそこへ――――
石田がすぐさま追いかけてきて、すぐに文世の濡れた箇所を無言で拭き出した。

 そして周囲にいる者に声をかけ、タオルハンカチを借り文世を続けてサポートする。
 石田のそれは、周囲から見て少し奇異ともいえる不可解な行動だった。

 一言も石田が文世に声をかけることはなく、無心の行動に近かったからだ。

 その対応は素早く的確で、あっという間に文世を元の濡れそぼっていない状態へと戻した。

 それからすぐに、石田は近くにいる柳井や北野を呼び、目で合図をする。
 それを受けた彼らは、すぐに大学の学長室へと向かう。

 石田は低い声で桜庭に怒りを向けた。

「謝れ──」

「……」


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