『胡蝶の夢』に囚われて ― 夢か現か幻か ―

7 ◇処分がくだされる

「早く永堀さんに謝れよ。目撃者はごまんといるんだ。
 いきなり水をぶっかけるなんて暴力と同じだからな。おまえ、退学になるぞ」

「石田くん、わたしはただ……。
何よっ、オオバ―な、たかが水くらいで」

「わかった、反省の色なしということだな」

「なによっ、なんで石田くんが永堀さんのことでそんな剣幕で怒るわけ? 
 永堀さんの恋人でもないのに……」

 石田と桜庭が押し問答している間に、指示されて学長室に向かっていた
柳井と北野が戻ってくる。

「永堀さん、先に行ってて……」
 そういうと、石田は柳井にアイコンタクトで文世を託す。

 もうこの頃には女子の花田小梅と白石彩夢がこちら側に来ていて
文世に寄り添う形で一緒にいた。

 それを──その3人を、柳井が引き連れてその場から立ち去る。

 そしてそのあと、石田は北野と共に桜庭の腕を取り、学長室まで
引きずって(連れて)行ったのだった。

「ちょっ、何すんのよっ」
とはいうものの、こんな形であっても石田に好意のある桜庭はうれしかったり
した。

 自分がどこに連れていかれようとしているのかが、ちっとも想像できない
オツムの緩い女は腕を取られ(腕に触れられ)浮かれてさえいた。

 男子学生ふたりに連れられて学長室に放り込まれた時でさえ、桜庭は余裕だった。
 そう──たかが水をかけたくらい、というのが本心だったからだ。
 叱責くらい、なんでもないと高を括っていた。

 そして、その日桜庭が学長から叱責されたことも、ちっとも自分にとって、大したことでは
なかった。

 ノーダメージで、いわゆる屁でもないということである。

 だが、翌日、予想外に停学処分がくだされ、1週間ほど不貞腐れて
桜庭は家で過ごした。

 そのような中、停学処分の期限が過ぎれば、学校へ行く気でいたのに――――
結局桜庭は退学になってしまった。



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