『胡蝶の夢』に囚われて ― 夢か現か幻か ―
9 ◇その後の永堀文世

 文世はそれなりに美しい女性であった。

 だが、学生時代は父親の心配を知っていたこともあり、また元々派手な装いや振る舞いを好まない性質だったこともあって、意識的に野暮ったいというのとは違うが、ほどほどに地味を心掛けていた。

 しかし、就職すると、学生時代の友人や知り合いが驚くほど──

華やかな装いに装飾品を纏い、バッグに靴など高級品を身に付け、颯爽と出社し、仕事をこなすようになる。

 同社に就職した学生時代からのボーイフレンド(ボディガード)たちも、あまりの変貌ぶりに、何故学生時代にボディガードという役回りのほかに、個人的に親しくしておかなかったのかと、少し後悔するほどに……。

           ◇ ◇ ◇ ◇

 そして大学を卒業し数年後、結婚して子供をもうけたあと、今でも仕事を続けている文世の印象はかなり変貌していた。

 見た目は……何でも物事白黒はっきりさせるためにはズバッと発言できるような勝気に見えるところも見受けられるようになり……。

 そして、内面は、思慮深く嫌なことも多少は受け入れられる懐の深さのある女性、そのような
女性に成長を遂げていた。

 ただ、人を騙したり裏切ぎったりするような相手の場合は違ってくる。
 そのような輩を許す度量は持ち合わせていない。

 この点だけは揺るぎがなく、そのような相手であるならば少しの温情も示さずバッサリと切って捨てることのできる度胸も持ち合わせている。

 ただ、10代の頃から恋愛音痴であったことから、適齢期になった折に父親から結婚相手を推薦された時、すんなりと受け入れるという経緯があった。

 だからといって勿論誰でもよかったというわけではない。
 
 よくよく考えて決めた──
つもりではあった。



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