離婚届を渡された契約妻ですが、罪を抱えたエリート外科医の愛が重すぎます
「なあ……俺たちは今まで、家に窮屈な生き方を強いられすぎていた……そうは思わないか」

 途端、己の顔から表情が抜け落ちたのを遥は自覚した。

 ( おもて)を上げれば、怖いほど真剣な眼差しをした真裕がいて、遥は逃げるように欄干に目を落とす。そして瞑目した。

 窮屈な生き方――そのとおりだわ。

 進学先や就職先、結婚相手に至るまで、遥のたどる道は全て父が決めてきた。五歳で清白家に引き取られた日から、己の人生は父と家のためにあった。

 そんな境遇に反感をいだかないはずはない。けれど、父は地域に強大な影響力を持つ政治家で、周囲の大人はみな彼の言いなりだった。抵抗を示すほどに遥を縛る枷は増えていく。ならば表向きは黙って従ったほうが平穏だ。そう諦めとともに悟るのに、さしたる時間はかからなかった。

 ――だから今こうして見合いの場にいる……

「はい。思います」

 噛み締めるように首肯してから、落ち着いた口調で付け足す。

「……ですが、それはどうしようもないことです。お互いに。だからこそ、ここでお見合いをしているのではありませんか?」
< 15 / 47 >

この作品をシェア

pagetop