離婚届を渡された契約妻ですが、罪を抱えたエリート外科医の愛が重すぎます
「……遥?」

 離婚届を見つめて妻が黙り込んでしまったからだろう、真裕が訝しげに名前を呼んだ。
 遥は顔を上げ、それから喘ぐようにただひと言を――およそ三年間言えなかった本音をぽろりとこぼしてしまう。

「いやです」

 真裕がハッとしたように目を瞠る。普段もの静かな妻がめずらしく自己主張を、しかも二人の間の取り決めを反故にするようなことを言ったので驚いたのだろう。その反応を目の当たりにした遥は、やはり口にすべきではなかった……と己の発言を後悔した。
 しかし、真裕が次いで垣間見せた、彼自身が葛藤しているかのような苦渋の表情を目にした瞬間、かすかな期待が胸をよぎる。

「理由は?」

 端的に問われて、遥は言葉に詰まった。

「理由……は」

 一番の理由は、好きだから。真裕のことを愛しているから。昔から、真裕は遥にとって心の支えだった。けれど、それは言ってはいけないことだった。なぜなら――

「遥、分かっているだろうが、これは契約結婚だ」
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