離婚届を渡された契約妻ですが、罪を抱えたエリート外科医の愛が重すぎます
「考えてもみてくれ。この離婚は、俺たちにとって、家のしがらみから逃れるチャンスになるはずだ。政略結婚を台無しにすれば、出来損ないのレッテルを貼られるだろうが、それは家にとって俺たちの価値が低くなるということでもある。そうすれば、家を出ていく自由だって得られるかもしれない」

 自由。その言葉を口にしたときの真裕の表情が実に晴れやかで、遥は思わず想像した。家のしがらみに囚われず、自身の進みたい道をゆく真裕の姿を。それはとても希望に満ち溢れていて、たぶんそんな未来を彼は熱望しているのだ。

 そうと分かると、離婚したくないなどとはやはり言うべきではないという気持ちが強まってしまう。彼のことを思うからこそ、余計に。

「君も、家のために我慢してきたことがあるだろ?」
「我慢、ですか」

 思案するかのように復唱したものの、それは確かにある。それも数え切れないほどに。その最初にして最大の出来事――母のことだ――を思い出した遥は、苦く微笑んだ。

「そうですね。あります。確かに……真裕さんの言うように、私たちは、自由を求めるべきなのかもしれません」

 遥が同意すると、真裕が頷いて右手を差し出す。
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