離婚届を渡された契約妻ですが、罪を抱えたエリート外科医の愛が重すぎます

食事会と庭園の花




 離婚届を預かったまま、七日が過ぎた。

 ダイニングキッチンの流しで皿を洗っていた遥はふとその手を止めて、顔を上げる。

 今、閉ざされたドアの向こうでかすかな足音がした。真裕が風呂から上がったのだろう。しばらく待つと、思ったとおり、ダイニングの続きのリビングに真裕がタオルで頭を拭きつつ姿を現す。けれど、風呂が空いたというひと言すらかけてくれる様子はない。

 ほんの七日前まではこうではなかった。夫婦の間には和やかな空気が流れていた。

 それが変わってしまったのは、あの朝からだ。真裕に離婚届を差し出されたとき。より正確に言えば、遥が口にした「いやです」という言葉がきっかけだったのだと思う。

 それらのやりとりがあったダイニングテーブルをちらりと見て、遥は肩を落とす。

『いやです』

 あの発言は、本当にうっかりこぼれ落ちたものだった。契約結婚の提案を呑んだときに心に決めたように、遥は真裕と真に心を通わせることができるまで、三年で離婚するという条件の撤回を求めるつもりはなかった。
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