離婚届を渡された契約妻ですが、罪を抱えたエリート外科医の愛が重すぎます
 ではなぜうっかりでも言ってしまったのかといえば、離婚に向けた具体的な段取りを当然のように進めようとする夫の姿にショックを受けたからにほかならない。

 真裕は遥に対して長らく続けていた頑なな態度を結婚した途端に軟化させた。だから、遥は期待してしまったのだ。もしかしたらこのまま結婚生活を続けていけるかもしれないと。

 ――でもやっぱり、その優しさは夫婦になった相手への義務的なものでしかなかったってことよね……

 誓いの口づけで彼が見せたあの熱のこもった眼差しも、きっと結婚式というシチュエーションで気持ちが高ぶっただけのことなのだろう。

 その証拠に彼はこの二年九ヶ月の間、恋愛的な意味では決してこちらに踏み込んでこようとはしなかった。それを思うに、予防線はきっちりと張られていたのだ。

 けれど、あの朝の発言で、真裕は妻が離婚を避けたがっていることを知った。そして互いの間により明確な線引きが必要だと感じたのだろう。万が一にも婚姻を継続する可能性があるなどと妻に期待をいだかせないように。

 こちらと目を合わせることもなく、口にする言葉も最小限。
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