離婚届を渡された契約妻ですが、罪を抱えたエリート外科医の愛が重すぎます
 まるで結婚する以前の彼に戻ったみたいだ、と遥は寂しく笑う。

 ――でも、あの頃とは違って今は原因が分かってる。なら、あがくことはできるはず。

 遥は洗い物を終えると、そっとリビングに移動し、ソファで寛いでいる夫とは反対側の位置に腰を下ろした。そしてローテーブル越しに声をかける。

「あの、真裕さん」

 夫は、なんだ、とは口にしないまま、問うような瞳だけで遥を捉えた。

「先日預かった離婚届のことですが……」

 途端、彼の表情に警戒の色が宿る。

「その話はしたくない」

 端的に突っぱねてリビングから出ていこうとする真裕を見て、遥も慌てて立ち上がった。

「待ってください」

 行く手を塞ぐように立ちはだかると、真裕が煩わしそうに眉をひそめる。その反応に遥は胸がじくりと痛むのを感じたが、顔には出さなかった。

「真裕さん、今度話そうって言ってましたよね。今度って、いつのことですか」

 責任感の強い彼のことだから、自身の発言を持ち出されれば逃げてばかりもいられなくなるだろう。その読みは正しく、彼はピタリと動きを止めたあと、背けていた顔をゆっくり遥に向けた。
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