離婚届を渡された契約妻ですが、罪を抱えたエリート外科医の愛が重すぎます
「なら聞くが。その離婚届を君はどうしたいんだ」
「それは……やっぱり、書きたくはありません」

 遥がそう答えると、じっと目を合わせて互いの内心を探り合うような時間がしばし続いた。

 凛々しい眉を不快げに寄せている真裕の眼差しに遥は怯みそうになる。けれど、己を奮い立たせてその瞳を見つめつづけた。

 頭の中にあったのは、離婚届の記入を拒んだときに真裕が見せた迷いの表情だ。

 ――もしかしたら真裕さんも、本心では離婚をためらっているのでは?

 あの朝にも同じことを思ったが、日に日にその確信は深まっていた。真裕が「また話そう」と自分から言ったにもかかわらず、こうしてこちらから話題を出すまで二人の間の契約について触れてこなかったからだ。まるで話し合いそのものを避けているみたいに。

 もしその態度が離婚への躊躇に起因しているのだとしたら、互いのためにも、離婚しないという選択肢について話し合うべきではないだろうか。遥はそう考えていた。

 すると、真裕がやれやれといった様子で視線を外す。

 腕を組み、再びこちらを見やった彼の目はとても冴え冴えとしていた。
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