離婚届を渡された契約妻ですが、罪を抱えたエリート外科医の愛が重すぎます
 遥は助手席で車体の揺れに身を任せながら、運転中の夫に何気なく目を向ける。唇を真一文字に引き結んだ彼は、苦り切った表情で前だけを見つめていた。

「……そんなに私を冬月家に関わらせるのがいやなんですか」
「そもそも、関わる必要がないだろ」

 彼は進行方向から目を逸らさずに答えた。

 真裕さんにとってはそうだろうな、と遥は思う。それに、自分たちは離婚することが決まっているから、妻を家の事情に立ち入らせないほうが彼にとってはあとあと面倒がなくていいのだろう。

 ――でも、どうしてここまでいやがるの?

 義母の様子では、真裕は妻を食事会に連れてくるようにと相当せっつかれていたようだ。ならば、一度でも遥を出席させたほうが、あれこれと詮索されずに済むように思う。

 夫の考えていることが分からず、遥は軽く首を振って窓の景色に視線を移した。

 冬月家の本邸は、冬月総合病院を見下ろす高台に建っている。車はちょうど坂道に差しかかったところで、日頃真裕が勤務する病院の真っ白な建物が左手側に見えた。

 遥はなかば無意識のうちに膝で両手を握る。
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