離婚届を渡された契約妻ですが、罪を抱えたエリート外科医の愛が重すぎます

父の命令と契約結婚

「お前の嫁ぎ先が決まった」

 父である清白(すずしろ)誠志郎(せいしろう)に呼び出された書斎でそう聞かされたのは、遥が二十四歳の春だった。
 そのときの遥の胸には期待も失望もなく、とうとう来たか、という達観だけがあった。

 大学を卒業して二年。遥は政治家である父の事務所を手伝いながら、近い将来、必ずこんな日が来るだろうと覚悟していた。跡取りとして不適格であるとみなされた娘の使い道など政略結婚くらいしかないし、それは父からも散々言われていたことだったからだ。

 使い道――そう表現すると、血のつながった子であるのにまるで情をかけられていない駒のようである。だが、事実そのとおりなのだから仕方がない。自身の政治基盤を実子に引き継ぐことを熱望していた父にとって、唯一の子である遥が姉の息子よりもはるかに劣っていたという現実は、遥に対してかすかにいだいていたかもしれない愛情すらかき消すほど失望するものだったのだ。

 ――もしかしたら、その〝かすか〟すら最初からなかったのかもしれないけれど。

 そんな内心のぼやきはおくびにも出さず、遥はすました顔で父に尋ねた。
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