離婚届を渡された契約妻ですが、罪を抱えたエリート外科医の愛が重すぎます
「それで、私はどなたと結婚すればよいのでしょう」

 けれど、その平静な心持ちは、父の返答を耳にした途端、大きく乱されることになる。

「冬月真裕だ。冬月総合病院の経営者一族の嫡男で、外科医をしている。お前とは面識があると聞いているが、覚えているか?」
「っ……ええ、はい。小中高と、同じ学校の先輩でしたから……」

 かろうじて応じたものの、声にはわずかな動揺がにじむ。そんな娘の様子など無視して誠志郎は話を進めた。

「なら話が早いな。ちかぢか見合いの席を設ける。形式的なものだが、先方に失礼がないよう抜かりなく準備をしておけ。話はそれだけだ」

 父は一方的に話を切り上げ、娘をさっさと書斎から追い出した。
 遥は呆然としたまま廊下を歩く。その心中は混沌としていた。

 父には小中高の先輩だと話したが、真裕との本当の出会いは、それ以前にある。だがそれは遥にとって大切な思い出で、父などとは共有したくない。
 真裕は初恋の相手であると同時に、決して叶わぬ恋の相手でもあったのだ。
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