離婚届を渡された契約妻ですが、罪を抱えたエリート外科医の愛が重すぎます
 さり気なくかばってもらえたことにむずかゆい気持ちがほんの束の間込み上げたものの、今はそのような場合ではないと意識的に気持ちを切り替える。

 二人に用意されていた席は長テーブルの真ん中あたりにあった。奥のほうの上座には、真裕の父である政彦がいて、その隣には妻の佳代子が席についている。ほかに遥が顔を知っているのは、対面に座している陽介(ようすけ)――真裕の弟くらいのものだ。

 遥と真裕がナプキンを膝に広げると、三人の使用人がダイニングにやってきて、それぞれの参加者の手元に飲み物と最初の皿を供しはじめる。

 グラスが行き渡ったところで、上座の政彦が立ち上がった。

「今日はみんな忙しい中よく集まってくれた。――そして遥さん、ようこそ冬月家へ。遅くなったが、こうして我が家に迎えることができて嬉しい」

 にこやかな表情のまま、政彦は一拍置く。

「堅い話は抜きにして、まずは一杯やろう。乾杯」
「乾杯」

 いっせいにグラスが触れ合い、澄んだ音が広がった。

 途端に空気がほどけたように場がざわめきはじめる。

「今週は立て込んだな。救急が途切れなくて」
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