離婚届を渡された契約妻ですが、罪を抱えたエリート外科医の愛が重すぎます
「ああ、本当にくたびれた。病棟も余裕がないんじゃないか? ほとんど満床だろ」
「そういえば、この間のオペ、経過どうなってる?」
「循環がちょっと不安定だ。あそこ、最初からハイリスクだと思ってた」
「院内の配置替え、また揉めてるらしいぞ」
「揉めるのはいつものことだろ。最後は院長が決める」
笑い声が交じり、誰かが「まあまあ」と杯を重ねる。
前菜を口に運びながらそれらに耳を傾けていた遥はすぐに、この場にいる人のほとんどは病院関係者なのだと理解した。飛び交う話題が医療に関することばかりで、専門用語も説明なしに通じる空気があったからだ。
一方の遥は完全なる部外者で、ときおり相槌を打つのが精一杯だ。ほとんど言葉を発することなく、黙々と食事を進める。
そうして一皿目を食べ終え、二皿目がテーブルに並びはじめた頃。
「――ところで、遥さん。清白先生はお変わりないかな」
政彦がそんなふうに切り出した。
清白先生というのは、政治家をしている遥の父のことだ。まるでおもねっているかのようなその呼び方が遥はあまり好きではなかったが、そんな内心は綺麗に覆い隠して頷いた。
「そういえば、この間のオペ、経過どうなってる?」
「循環がちょっと不安定だ。あそこ、最初からハイリスクだと思ってた」
「院内の配置替え、また揉めてるらしいぞ」
「揉めるのはいつものことだろ。最後は院長が決める」
笑い声が交じり、誰かが「まあまあ」と杯を重ねる。
前菜を口に運びながらそれらに耳を傾けていた遥はすぐに、この場にいる人のほとんどは病院関係者なのだと理解した。飛び交う話題が医療に関することばかりで、専門用語も説明なしに通じる空気があったからだ。
一方の遥は完全なる部外者で、ときおり相槌を打つのが精一杯だ。ほとんど言葉を発することなく、黙々と食事を進める。
そうして一皿目を食べ終え、二皿目がテーブルに並びはじめた頃。
「――ところで、遥さん。清白先生はお変わりないかな」
政彦がそんなふうに切り出した。
清白先生というのは、政治家をしている遥の父のことだ。まるでおもねっているかのようなその呼び方が遥はあまり好きではなかったが、そんな内心は綺麗に覆い隠して頷いた。