離婚届を渡された契約妻ですが、罪を抱えたエリート外科医の愛が重すぎます
「今の時期は、先生も忙しいだろうね。年度末だし」

 遥は無理やり愛想笑いを浮かべ、謙遜しようとしたが、それを言葉にする前に陽介が割って入った。彼は兄嫁の言葉を遮ったことを気にした様子もなく、対面の席から真意の読めない笑みを向けてくる。

「……そうですね」

 遥も結婚する前は誠志郎の事務所を手伝っていたので、年度末の忙しさは分かっていた。言葉少なに同意すると、今度は政彦がワイングラスを傾けながらぽつりと呟く。

「今年も、例年どおりに進めばいいんだがね」
「それは――」

 どの案件の話でしょうか?
 遥がそう口にしかけた瞬間、佳代子が制するように微笑んだ。

「手続きって、どうしても時間が読めないでしょう? 病院のことは、現場だけではどうにもならない部分があるもの」

 遥は言葉にならない気持ちの悪さを覚えてわずかに眉をひそめた。

 何気ない世間話に見せかけて、彼らはなにかをほのめかしている。明言されない手続きとやらの正体は推測するほかないが、彼らがこちらになにを望んでいるかは明白だ。

〝手続きが滞りなく進むように、清白先生によろしく伝えてくれ〟
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