離婚届を渡された契約妻ですが、罪を抱えたエリート外科医の愛が重すぎます
 それでも、優しく温かな瞳を向けてくる彼が自分のことをとても思いやってくれていることはなんとなく察せられて、遥はほとんど飛びつくような勢いで抱きついていた。

 その胸にしがみつきながら、大粒の涙をあふれさせる。

「真裕くん……」
「うん」
「お母さん、いなくなっちゃった」
「……うん」
「会えなかったの。何度もお母さんに会いたいって言ったのに、会わせてもらえなかったの」
「……そっか」

 そのあとは言葉もなく、遥はただただ泣きじゃくり、真裕は黙って寄り添ってくれていた。

 涙でぼやけた視界の中で、花期を過ぎたローズマリーの濃い緑が風に揺れていたのをやけに鮮明に覚えている。

 思えば、このときから真裕は遥にとって特別な存在となったのだろう。

 そして、その気持ちはどれほど時間が経っても消えなかった。

 たとえ、それ以降真裕が遥によそよそしい態度をとるようになっても。二度と優しく笑いかけてくれなくなっても。
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