離婚届を渡された契約妻ですが、罪を抱えたエリート外科医の愛が重すぎます
   ◇ ◇ ◇

 冬月家での食事会から数日が過ぎた。

 その日、人と夕食の約束をしていた遥は、駅近くの落ち着いた和食処を訪れていた。客席は個室ではないが、ほどよく仕切りがあり、周囲の声はざわめきに紛れている。

「おう」

 先に着いていた従兄の理人が、席から軽く手を上げた。今夜は彼から、会って話したいことがあると呼び出されたのだ。

「ごめんね、待たせた?」
「全然。こっちも今来たとこ」

 座敷に腰を下ろした理人は、土曜日なのにどうやら仕事終わりらしくスーツ姿だ。

 遥がコートを脱ぎ、彼の向かいに座ったところで、温かいお茶が運ばれてくる。湯呑みから立ち上る香りにホッと息をついていると、理人がメニューから視線を上げて苦笑した。

「寒かっただろ。風邪とか引いてないか? ちゃんと食えてる?」
「……うん。たぶん」

 最近いろいろなことがあって食が細くなりがちだったから少し歯切れの悪い答えを返すと、「たぶんってなんだよ」と理人が笑う。互いをよく知る間柄だからこそ出る軽口に、遥は安堵を覚えた。

「適当に頼んでいい?」
「うん」
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