離婚届を渡された契約妻ですが、罪を抱えたエリート外科医の愛が重すぎます
 理人の姿勢がわずかに前のめりになる。

「それで?」
「私、諦めたくなくて。離婚しないためには、真裕さんの事情をなんとかするしかないでしょう? 冬月家の食事会に行ったの。真裕さんにはすごく反対されたけど、無理を押し切って」
「どうだった」
「……みんな、父さんのことを先生って呼んでた。手続きがどうこうって。補助金の話も出て……真裕さん、すごく嫌そうだった」

 理人が顔をしかめる。

「冬月家は、父さんの力を当然のものとして使ってる。真裕さんはそれが嫌で、離婚して自由になりたい……みたい……」

 遥は、あの日庭で見た真裕の暗い目を思い出して、押し黙る。

 家に縛られて生きる窮屈さはよく分かる。そこから逃れたいと願う切実さも。

 ――だからこそ苦しい。

 やはり真裕の望みどおり、自分たちは離婚するべきなのではないか。そんなふうに考えはじめてしまっている。

 ローズマリーを目にしたときの彼の表情が、脳裏に焼き付いて消えてくれない。苦しみに満ちた強張り方をしていた。あれが忘れている人の反応とは思えない。

 ――あれは、最大級の拒絶だ。

 理人はしばらく黙ってから、箸を置いた。
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