離婚届を渡された契約妻ですが、罪を抱えたエリート外科医の愛が重すぎます
 しかしその一方で、この二年九ヶ月の彼は優しかったし、今だって離婚を迷っているような素振りを見せている。

 ――分からない。

「だから、まずは、家と家の話と夫婦の話を切り離せ。そのうえでとりうる未来を考えろ」

 遥は唇を開きかけて、閉じた。

 理人は静かに待っていた。続きを促すでもなく、逃げ道を塞ぐでもなく、ただ遥が自分の気持ちを言葉にする瞬間を見守るように。

「家のことを別にするなら、私は……」

 やっぱり。どうしても。

「離婚したくない……」

 幼いときから特別に思っていた。だから、小学校で再会したとき冷たくされてとても傷ついた。

 それでも想いは消えなくて。

 半ば追いかけるような形で同じ中高一貫校に進学した。

 真裕は遥にとって憧憬や尊敬の対象で、彼のことを思うと頑張れる、そんな存在だった。

 だから遠くから見つめていられればよかった。

 それが明確な好意に変わったのは、おそらく中学二年生の夏だ。

 その年、遥と真裕は中等部と高等部それぞれの生徒会に所属することになり、関わる機会が増えてしまった。それが最初の誤算だった――
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