離婚届を渡された契約妻ですが、罪を抱えたエリート外科医の愛が重すぎます
 彼の歩調に合わせて、ぶら下がったつま先がゆらゆらと揺れる。その振動はゆるやかで、言葉にはされなくとも、遥が怖がらないように彼が気遣いながら一歩一歩踏み出しているのが伝わってくる。

 遥は彼の広い背中にしがみつきながら、どくどく、と激しく脈打つ己の心臓の鼓動を感じていた。真裕の体温は高くて、そのぬくもりは雨に打たれた身体に心地よかったが、心のほうは緊張とときめきでどうにかなりそうだった。

 ――やっぱり真裕くんは、昔と変わらず優しい……

 嫌っている相手にまでこんなに親切にするなんて、遥が勘違いでもしたらどうするつもりなのだろう。

 ――分かってる。真裕くんは、私のことが嫌い。ちゃんと、分かってる……

 彼の背中で何度も心の中でそう繰り返す。

 真裕はどうやら花火を見ることを諦めたらしく、人の流れとは反対の駅がある方向へと進んでいるようだった。自分のために真裕まで花火を楽しめなくなってしまったことを遥は申し訳なく思ったが、どうしようもない。

 そこで彼から声がかかる。

「なあ、スマホ持ってるか?」
「持ってます。あ、でも、今は充電が切れてるんでした」
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